2026年6月
家計・節約のこと家中をブラインドにして後悔|ルンバに壊され、針金で直しながら「コンパクトハウス」に憧れる話
地方の一軒家にひとりで住んでいると、ある時期から「修繕費」という言葉が、急に現実味を帯びてきます。
屋根、外壁、給湯器、水回り——どれもこれも、何十年か経てば順番に手を入れる時期が来る。わかってはいるけれど、おひとりさまだと相談する相手もいなくて、見積もりを何度もらっても、なかなか踏ん切りがつきません。
今日は、そんな私の「家のこれから」の話。きっかけは、たった一枚のブラインドでした。
おしゃれに憧れて、家中をブラインドにした
家を整えたとき、私は窓という窓を、ぜんぶ縦型ブラインド(バーチカルブラインド)にしました。
あのスッと縦に落ちるライン。ホテルみたいで、垢抜けて見えて、当時の私は「カーテンよりこっちのほうが素敵」と、すっかり夢中だったんです。
……それが、今になって、じわじわ効いてくるとは思いませんでした。
ルンバが、容赦なく引っかける
まず、ルンバです。
床のお掃除はルンバにお任せ——これも私の数少ない文明の利器なのですが、この子がブラインドの裾を、それはもう見事に引っかけてくれます。
縦型ブラインドは、一枚一枚の布(ルーバー)の裾が、細いチェーンでつながっています。そこにルンバが突っ込んで、ぐいっと持っていく。気づくと、裾の留め具が外れたり、チェーンが切れたり。
直し方? 針金です。
外れた裾を、針金でくくって応急処置。我ながら、なかなかの力技です。
布が裂けかけたところは、黒いダブルクリップでパチン。
事務用のダブルクリップが、まさかこんなところで活躍するとは。
ホテルみたいに憧れていたブラインドが、今や針金とクリップだらけ。近くで見ると、なかなかの生活感です。
カーテンみたいに、気軽に替えられない
いちばん後悔しているのは、これです。
カーテンなら、汚れたら洗えるし、飽きたり傷んだりしたら、サッと外して新しいものに替えられる。ニトリでも通販でも、サイズを選んで買えばいい。
でもブラインドは、そうはいきません。レールも金具も専用で、布(ルーバー)だけ替えるにも品番だの寸法だのが必要で、いよいよダメなら一式まるごと交換。一枚、また一枚と劣化していくのを、針金でだましだまし使いながら、「全部替えたら一体いくらかかるんだろう」と、見て見ぬふりをしています。
ブラインド一枚から見えた、「家まるごと」の経年劣化
そして、ハッとするんです。
ブラインド一つでこれなんだから、この家は丸ごと、同じように歳をとっていくんだ、と。
屋根も、外壁も、お風呂も、ぜんぶ「替えたいけど、気軽には替えられない」もの。おひとりさまの私が、これから何十年、この大きな箱のメンテナンスを、ひとりで背負って、ひとりで決めて、ひとりで払っていく。
見積もりの紙を眺めては、ため息をついて、引き出しにしまう。その繰り返しです。
そんなとき、イーロン・マスクの「コンパクトハウス」を知った
気持ちが沈んでいたある日、ネットで面白いものを見つけました。
あのイーロン・マスクが、一時期住んでいた——と話題になった、極小住宅です。アメリカの「Boxabl(ボクサブル)」という会社の「Casita(カシータ)」という商品。
調べてみたら、もう、目からウロコでした。
| コンパクトハウス(Boxabl Casita)のすごいところ | |
|---|---|
| 広さ | 約35平方メートル(約10坪)。ひとり暮らしには十分な広さ |
| 設備 | 寝室・リビング・キッチン・バス・トイレ完備。冷蔵庫も食洗機もある |
| 移動 | 折りたためてトラックで運べる。現地で数時間広げるだけで完成 |
| 価格 | 約5万ドル(およそ550万円)※本体価格。輸送・設置費は別 |
※マスク氏が住んでいたという話は、本人のツイートをもとに「そう言われている」レベルで、確定情報ではないようです。それでも話題になるだけのインパクトはありますよね。
折りたためる家。トラックに積んで、運べる家。
大きな一軒家のメンテナンスに頭を抱えていた私には、これがもう、まぶしく見えました。
私が惹かれた、3つのポイント
なぜこんなに心を掴まれたのか、考えてみました。
ひとつめは、コンパクトなこと。
ひとりに、あの大きな家はもう要らない。お風呂も浴槽が大きすぎて持て余しているくらいで(その話はこちら)、暮らしぶりに対して、家が大きすぎるんです。約10坪に必要なものが全部入っているなら、おひとりさまには、それで十分すぎる。
ふたつめは、シンプルなこと。
機能はちゃんとあるのに、無駄がない。あれもこれもと欲張った結果、針金で直すブラインドだらけになった私には、この潔さが心に沁みました。持ち物が少なければ、壊れるものも、直すものも、悩むことも少ない。
みっつめは、移動できること。
これがいちばん衝撃でした。家って「土地に縛りつけられて、一生背負うもの」だと思い込んでいたけれど、運べる家なら、その前提ごとひっくり返る。暮らしに合わせて、家のほうが動けばいい。「家は背負うもの」じゃなくて、「家は道具」。そういう考え方が、世の中にはあるんだ、と。
とはいえ、現実もちゃんと書いておく
夢みたいな話なので、検査技師らしく、冷静な部分も。
- 日本では、まだ簡単に手に入りません。 Boxablはアメリカの会社で、注文してもなかなか届かない(頭金を払った人が大勢待たされている)という報道もありました。日本の建築基準法や、寒い地域での断熱、設置できる土地の問題もあって、「明日から住める」ものでは全然ない。
- 「家を捨てる」決心は、また別の重さ。 今の家には思い出も荷物も詰まっていて、踏ん切りがつかないのは、ブラインド一枚どころの話じゃありません。
- つまり今すぐどうこう、ではなく、あくまで「こういう生き方もあるのか」と、目が開いた、という段階です。
ブラインド一枚から、暮らしのサイズを考え直す
針金でブラインドを直しながら、私はたぶん、家そのものに「重いなあ」と感じ始めているんだと思います。
コンパクトハウスを、本当に買うかどうかはわかりません。たぶん、しばらくは今の家で、針金とクリップと付き合っていくのでしょう。
でも、「家は大きくて、土地に根を張って、一生かけて守るもの」という思い込みが、ガラガラと音を立てて揺らいだのは確かです。おひとりさまの後半生、暮らしのサイズは、自分で選び直していい。ブラインド一枚が、そんなことを教えてくれました。
まずは、この針金、いいかげん何本目だろう……というところから。少しずつ、考えていきます。
参考:Business Insider Japan「イーロン・マスクも住んでいる? 約5万ドルのプレハブ極小住宅『Casita』をのぞいてみた」/この記事は特定の商品の購入をすすめるものではなく、私の個人的な感想です。