2026年9月
仕事のひとりごと超音波担当の検査技師の1日|毎日15〜20人、お腹も心臓も順番はランダム
心エコーの記事では、検査台の上から見た心エコーのことを書きました。今回は、その向こう側。エコーを担当している私が、検査室で1日どう過ごしているのかを書いてみます。
私の担当は、生理検査全般です。生理検査は、体そのものの働きを調べる検査で、エコー(超音波検査)もそのひとつです。
仕事のほとんどはエコーですが、その合間に、心電図や肺活量の検査などのほかの生理検査、それに血液検査や尿検査もしています。
朝は、機械の準備と、前回の所見から
朝いちばんにするのは、機械の準備です。
それから、その日の予約を確認して、検査の流れを頭に入れます。参考になる資料を読み、前回の所見があれば、目を通しておきます。
前回どこに何があったのかを知っているかどうかで、その日の見方が変わります。心エコーの記事にも書きましたが、最初の印象に引っぱられないように、先に情報を頭に入れておくのです。
1日15〜20人。お腹も心臓も、順番はランダム
私が一人で担当するのは、1日15〜20人ほど。以前は、最大で25人をこなしたこともあります。勤務は月曜から金曜まで、たまに土曜日もあります。心臓だけで1日10件ある日もあります。そして、エコーのほかにも仕事があります。
検査の種類は、日によってばらばらです。
- お腹(腹部)
- 首(頸部)
- 甲状腺
- 足の動脈・静脈
- 心臓
- 乳腺
これが、ランダムに回ってきます。お腹の次に心臓、その次に足の血管、ということもあります。見る臓器が変われば、プローブ(体に当てる器具)も、機械の設定も、頭の中の見方も切り替えます。
これは、小さい病院ならではの悩みだと思います。大きい病院では、検査を担当する人数もいて、それぞれが専門で行うことができます。小さい病院では、一人でいろいろな検査を受け持つことになります。同じ悩みを抱えている人は、きっと少なくありません。
合間に、ほかの生理検査も
ほかの生理検査は、エコーと同じ検査室にあるので、エコーの合間に行います。
血液検査や尿検査は、休憩時間の交代のときに受け持ちます。
急に入ってくる検査もあります
予約どおりに進まない日もあります。症状に合わせて、急に入ってくる検査があるからです。
そういうときは、予約されている方に、遅れることを説明して、入れさせてもらいます。お待たせしてしまう方には、本当に申し訳ないと思っています。
所見は、忘れないうちに
所見(検査で見えたことの記録)は、なるべく検査が終わったらすぐ書きます。記憶を忘れないうちに、です。
いちばん気を張るのは
1日の中でいちばん気を張るのは、次の2つです。
- 予約の時間に、遅れないようにすること
- 緊急性のある所見があったとき
超音波の検査をする人の、体のこと
ここからは、少しだけ体の話を書かせてください。
エコーは、検査の体勢のせいで、腰痛になる人も多い仕事です。プローブを持つ手首や親指、肘にも負荷がかかります。そのうえ、暗い部屋の中で画面を見続けます。集中力も要ります。私自身も、手・肘・肩を痛めてきました(職業病?──手・肘・肩、ぜんぶ痛めた話)。
これは、私だけの話ではないようです。日本超音波医学会の提言には、次のようなことが書かれています。
- 超音波の検査をする人へのアンケートで、およそ4人に1人に、肩や腕・腰などの症状があった。多かったのは、右側の肩や腕、腰の違和感、眼の疲れ
- この仕事に体を痛めるリスクがあると知っていたのは、40%だけだった
- 1件あたりの検査時間の平均は、心臓で25分、お腹で18分、足の血管で35分
- 施設は、1日の検査の時間か件数に上限を設けて、管理する必要がある
提言では、1時間検査をしたら15分は手を止める(休憩をとるか、プローブを持たない作業をはさむ)として、休憩時間を除いて8時間働く場合、実際にプローブを持って検査できる時間は、合計で6.4時間まで、という考え方が示されています。6.4時間続けて検査してよい、という意味ではありません(提言には、この6.4時間で、1件15分ならおよそ25件、30分ならおよそ12件、という例も書かれています)。
私の勤務は、休憩を除いて7.5時間です。同じ考え方で、上の平均時間を使って計算してみると、こうなります。
- 1日に検査できる時間:6時間まで
- 1日の件数の上限の目安(1種類の検査だけをした場合)
- 心臓だけ:およそ14件
- 足の血管だけ:およそ10件
- お腹だけ:およそ20件
私の1日は、心臓も足の血管もまざって15〜20人。心臓だけで10件の日もあります。この目安を超える日もある、ということです。
ただ、この計算には、現場の技師として疑問に思うところがあります。
提言の6.4時間は、プローブを持って検査をしている時間の上限です。検査と検査の合間の所見の入力などは、体の負担が軽くなる作業であれば、手を止める時間(中断)とみなせる、とされています。
でも、実際の1日には、検査のほかにも時間を使います。
- 受付や、患者さんの呼び込み・誘導
- ご高齢の方などへの、介助や対応
- 所見を書く時間
- エコー以外の検査
とくにご高齢の方の対応は、体も気も使います。これを「手を止める時間」と呼ぶのは、現場の感覚とは違います。
つまり、上の目安は、1日中エコーだけをしていて、ほかの仕事がない場合の数字です。こうした時間も含めて考えると、無理なく続けられる件数は、もっと少なくなると私は思います。
それに、この上限に近い数を毎日続けたら、ほとんどの人が疲れ切ってしまうと思います。私がこなしている件数を話すと、驚かれることも多いです。
若い頃は、この件数もこなせていました。でも最近は、疲れが残るようになりました。長く続けるための件数、という目で考えたいと思うようになりました。
超音波の検査をしている人の中には、体に支障が出て、辞めていく人もいると聞きます。
本当は、病院や検査部門の上の方にも、知ってほしいと思っています。件数をこなさざるを得ない。でも、それを言えない立場の人もいる、ということを。
提言には、1日の検査時間や件数の管理のほかに、業務のローテーションで、同じ人が同じ種類の検査を繰り返す回数を減らすことも有効、と書かれています。人数の少ない職場では難しいこともあります。それでも、上限を決めて管理することや、担当を回すことを、できるところから考えてもらえたらと思います。
いちばん、ほっとする時間
いちばんほっとするのは、帰り道です。
家に着いたら、お菓子とコーヒー。YouTubeやブログを見て、クスッと笑ったり、誰かの話に共感したりする時間が、私の1日の終わりです。
仕事の本音のほうは、ひとには言えない検査技師の愚痴に書いています。
現場で無理をしながら働いている技師仲間は、きっと多いと思います。どうか、ご自身の体も大切にしてください。そして、働く環境が少しずつでも良くなっていくことを願っています。
※検査の流れや件数、担当のしかたは、施設によって違います。これは、私のいまの職場での1日です。
参考:日本超音波医学会 機器及び安全に関する委員会「超音波検査者が安全・快適で健康的に働くための提言」

おひとりさま検査技師
臨床検査技師として病院に30年。生理検査全般を担当、とくに超音波検査(おもに心エコー)。地方在住・50代・おひとりさま。 検査室から見えることと、暮らしのことを書いています。詳しいプロフィール


