2026年9月
健康・検査のこと心エコーで、なぜ左を下にして寝るの?|時間・服装・痛いとき、技師が画面で見ていること
・左を下にして横になるのは、体の真ん中にある心臓を、胸の左側に寄せて見やすくするためです。
・時間は、私の病院では所見を書くところまで含めて20分。心臓は「動き」を見る検査なので、ほかの部位より長くかかります。
・服は胸の上まで上げてもらうので、ワンピースのような上下がつながった服は避けるのがおすすめです。
・結果は、その場ではお伝えできません。医師が判断してから、説明があります。
「左を下にして、横になってください」
心エコー(心臓の超音波検査)を受けたことがある方は、たぶんこう言われたと思います。お腹のエコーは仰向けなのに、なぜ心臓は横向きなのか。
私はいま、エコーの中でも、主に心臓を担当しています。検査台の上で患者さんからよく聞かれることを、順番にお話しします。
なぜ、左を下にして横になるの?
心臓は、意外と体の中心にあります。
胸の左側にあるイメージが強いのですが、実際には胸のほぼ真ん中、胸骨のうしろあたりにあって、少し左に傾いています。そして、そのまわりを肺が囲んでいます。
超音波は、空気を通りにくい性質があります。肺は空気でふくらんでいるので、心臓の手前に肺がかぶると、画面が白くなって、心臓がよく見えなくなってしまうのです。
そこで、左を下にして横になってもらいます。そうすると、心臓が胸の左側に寄って、胸の壁に近づきます。そのうえで、肋骨と肋骨のすき間(肋間)から、プローブ(体に当てる器具)を当てて見ていきます。
最後は、仰向けで「みぞおち」からも見ます
横向きで見終わったら、最後に仰向けになってもらって、みぞおちのあたりからも見ます。
ここで見ているのは、たとえばこんなところです。
- 下大静脈(体から心臓に戻ってくる、太い静脈)
- 心臓を下のほうから見て、心臓を包む袋に液(心のう液)がたまっていないか
- お腹の大動脈の血流から、大動脈弁の逆流の様子
同じ心臓でも、当てる場所が変わると、見えるものが変わります。いくつかの方向から見て、確かめていくのです。
「息を止めてください」「吸って、止めてください」
検査の途中で、息を止めてもらうことがあります。見る場所によっては、逆に、吸ってから止めてもらうこともあります。
息をすると、肺がふくらんで、心臓の前にかぶりやすくなります。見えづらいときに、少しだけ息を止めてもらうのは、そのためです。苦しくなったら、遠慮なく息をしてください。
時間は、どのくらいかかるの?
私のいまの病院では、予約の都合もあって、所見を書くところまで含めて20分です。時間は、施設によって違います。
心臓は、ほかの部位より時間がかかります。患者さんには、「動きを見る検査なので、時間がかかります」とお伝えしています。
これも私自身の心臓です。右側は、心臓の壁の動きを、左から右へ時間の流れにそって記録したものです。上から、右室・心室中隔・左室・後壁。心臓が縮んだり広がったりするたびに、壁が波のように動いているのが分かります。
長くかかるのは、所見が多いときと、見えづらいときです。見えづらいだけのこともあるので、長くかかったからといって、悪いところがあるとは限りません。
聞こえてくる音は、心臓の音?
検査の途中で、機械から音が聞こえてくることがあります。「これ、心臓の音ですか?」と、よく聞かれます。
お答えしているのは、「直接の心臓の音ではありません。血液の流れを音に変えて、評価しています」ということです。これは、ドップラー法という方法です。
救急車のサイレンは、近づいてくるときは高く、遠ざかるときは低く聞こえます。これがドップラー効果です。心臓の中を流れる血液に超音波を当てると、戻ってくる音の高さが、血液の向きや速さによって変わります。その変化を、流れの向きや速さとして画面に表したり、音にしたりしているのです。
押されて、痛いときは
プローブで押されて痛い、ということもあると思います。
そういうとき、患者さんには、「普段その場所が痛くなければ、今はプローブが当たって痛いのです」とお伝えしています。
肺がかぶってしまうときや、体つき・胸の形によっては、少し押して見ることがあります。痛いときは、我慢せずに言ってください。力加減を変えられます。
どんな服で行けばいい?
私の病院では、服を胸の上まで上げてもらって検査をしています。
ですから、ワンピースのように上下がつながった服は、少し困ります。上下が分かれた服のほうが、受ける方も楽だと思います。
時間の都合もあって、いまの病院では着替えは用意していません。検査着を用意している施設もあるので、気になる方は予約のときに聞いてみてくださいね。
結果は、その場で聞けるの?
検査中に「何か悪いんですか?」「結果はどうですか?」と聞かれることがあります。
お答えは、いつもこうです。「結果は、ここではお答えできないです。ただ、緊急性のあるときは、医師に確認したうえでお知らせします」
私たち検査技師は、画面の中の変化を見つけて、記録して、医師に伝えるところまでが仕事です。それが何なのか、どうするのかを判断するのは、医師です。だから、その場ではお答えできないのです。
画面の前で、技師がしていること
私自身の心臓です。心臓の先端のほうから見た画像で、4つの部屋が一度に写っています。画面の左側が、体の右側になります。
心臓は、止まって写ってはくれません。動いている中から読み取るので、この仕事では、よく「心眼で見る」と言われます。
ひとつ見えたら、「だとすると、ここはどうなっているだろう」と理屈でつなげながら、次を確かめていく。その方の心臓のストーリーを組み立てていく感じです。
ただ、最初に見たときの印象に引っぱられやすい検査でもあります。だから始める前に、心電図やレントゲン、患者さんの情報、これまでに受けた心臓の処置など、最低限のことを頭に入れてから臨んでいます。思い込みで、見落とさないためです。
検査台の向こう側で、私が1日どう過ごしているのかは、超音波担当の検査技師の1日に書きました。
まとめ
- 左を下にするのは、体の真ん中にある心臓を、胸の左側に寄せて見やすくするため
- 時間は施設によりますが、動きを見る検査なので、ほかより長め。長くかかっても、悪いとは限りません
- 上下が分かれた服がおすすめ。結果は、医師から説明があります
心電図の検査とセットで受けることも多いと思います。心電図の電極のことは、心電図の電極、なぜ10個も?に書きました。お腹のエコーで押される理由は、お腹のエコーで、なぜ押されるの?にあります。
検査の前に、データだけでなく、その方の背景にも目を通すようになったのには、若いころに上司からもらったひとことがあります。そのことは、「病む人の心を」に書きました。
※この記事は、検査技師としての一般的な知識と、私のいまの職場での経験をまとめたものです。検査の進め方や時間、服装の決まりは、施設によって違います。検査結果の解釈や診断・治療については、医療機関でご相談ください。

おひとりさま検査技師
臨床検査技師として病院に30年。生理検査全般を担当、とくに超音波検査(おもに心エコー)。地方在住・50代・おひとりさま。 検査室から見えることと、暮らしのことを書いています。詳しいプロフィール


