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おひとりさま検査技師のひとりごと
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2026年7月

健康・検査のこと

氷をガリガリ食べたくなる、その疲れは貧血かも|50代女性と鉄不足、貧血もちの検査技師の話

先に、結論から。
疲れやすい・立ちくらみ・無性に氷を食べたくなる——これらは、鉄が足りないときのサインのことがあります。
・女性は、妊娠・月経(とくに経血が多い時期)で鉄を失いやすいもの。私も何度も貧血になり、鉄剤のお世話になりました。
・健診の「ヘモグロビン」が正常でも、蓄えの鉄(フェリチン)が少ない「隠れ貧血」もあります。気になる症状が続くなら、一度、医療機関で相談を。

正直に、告白します。私、昔から氷を、ガリガリ食べるのが好きだったんです。

夏でもないのに、製氷皿の氷を口に放り込んで、バリバリ噛む。行儀が悪いと思いながら、なぜだか、それが妙に心地よくて、無意識にやっていました。

——これ、実は、体からのサインでした。

氷を頬張ってガリガリ食べる女性と、氷の入ったグラスのイラスト

▲ つい氷をガリガリ。それ、鉄不足のサインかも。

氷が無性に食べたくなる、あの感じ

鉄が足りなくなると、氷を無性に食べたくなることがあるとされています。「氷食症(ひょうしょくしょう/pica)」と呼ばれる症状です。

はっきりした理由はまだ分かっていない部分もあるのですが、鉄欠乏の人に見られることが知られていて、鉄を補うとおさまることが多いそう。

私がこれを知ったのは、検査の勉強をしていたときでした。教科書に「鉄欠乏性貧血の症状:氷食症」と書いてあるのを読んで、「これ、私のことだ」と、思わず苦笑いしたのを覚えています。悪いと思いながらガリガリしていた、あの心地よさには、ちゃんと理由があったんですね。

私と貧血の、長いつきあい

思い返せば、私は何かの拍子に、よく貧血になる人でした。

とくに、女性の体の節目です。妊娠中は貧血になって、鉄剤を飲んでいました。閉経前、月経の出血量が多かった時期も、ふらふらしていました。ひどいときは、ヘモグロビンが9〜10(g/dL)くらいまで下がったことも。女性の基準はだいたい12以上とされるので、なかなかの数字です。

女性の貧血の多くは、この「出血で鉄を失う」ことが原因。毎月の月経、そして妊娠・出産。女性の一生は、鉄を失う機会と、どうしても隣り合わせなんです。

検査技師の目線:ヘモグロビンとフェリチンは、別もの

ここは、検査技師として少し丁寧に説明させてください。「貧血の検査」と一口に言っても、見ている中身が違います。

検査 何を見ているか たとえると
ヘモグロビン(Hb)今、血液が運べる酸素の量今日のお財布の中身
フェリチン体に蓄えてある鉄(貯蔵鉄)貯金の残高
血清鉄・TIBC今、血液を流れている鉄と、それを運ぶ器の余裕財布の中身と、財布の大きさ

大事なのは、「お財布(ヘモグロビン)は足りていても、貯金(フェリチン)は空っぽ」ということが起こる、という点です。これが、いわゆる「隠れ貧血」。健診のヘモグロビンだけ見て「正常です」となっても、その奥で鉄の貯金が尽きかけている人が、実はいるんです。

💡 検査技師の豆知識
鉄が減るとき、体はまず貯金(フェリチン)から先に切り崩します。だから、ヘモグロビンが下がる前に、フェリチンはこっそり減り始めている。「疲れやすいのに、健診の貧血は引っかからない」——そんなときは、フェリチンを測ってもらうと、隠れた鉄不足が見えることがあります。ちなみに私自身は、フェリチンも血清鉄もTIBCも測ったことがありますが、そのときは正常でした。私の場合は、出血で一時的にヘモグロビンが下がる、わかりやすいタイプだったようです。

もう一歩だけ、検査値の話——MCVとMCHで「タイプ」が見える

せっかくなので、検査技師らしい話を、もう一歩だけ。

血算(血液の基本検査)には、MCV(赤血球の大きさ)とMCH(赤血球1個あたりの血色素の量)という項目があります。実はこの2つを見ると、貧血の「タイプ」まで、ある程度見当がつくんです。

タイプ 赤血球のようす 考えられやすい原因
小球性(MCVが低い)小さくて色の薄い赤血球鉄欠乏(月経・慢性の出血など)
正球性(MCVがふつう)大きさはふつうなのに数が足りない急な出血、慢性の病気にともなうもの など
大球性(MCVが高い)大きいけれど数が少ない赤血球葉酸・ビタミンB12の不足 など

健診の結果用紙にも、MCV・MCHはたいてい載っています。ヘモグロビンが低めだったとき、ここもあわせて眺めると、「鉄の不足なのか、それとも別の理由か」のヒントになります(もちろん、判断はお医者さんの仕事。眺め方のヒント、として)。

そしてもうひとつ、原因を考えるうえで大事な確認が、月経の量(月経過多)・胃腸からの出血・黒い便・慢性の病気の有無。貧血は「結果」であって、その奥に必ず「理由」があるからです。

ちなみに、私の「フェリチンは正常なのに、ヘモグロビンが低い」という組み合わせ。いま検査技師として振り返ると——月経の出血量が多い時期は、貯金(フェリチン)を使い切る前に、お財布(ヘモグロビン)が先に軽くなる、そんな形だったのだろうと思います。妊娠中の貧血は、血液が薄まる自然な変化に加えて、葉酸の需要がぐっと増えることも関係していたのかもしれません。当時は葉酸とビタミンB12を、意識して摂るようにしていました。

エコーの現場から——貧血の「原因」が、お腹で見つかることがある

私は日常的に、超音波(エコー)検査を担当しています。その現場の実感も、ひとつ。

腹部のエコーをしていると、貧血につながる所見が見つかることがあります。

たとえば、脾臓(ひぞう)の腫大。これは女性に限らず、男性にもあります。脾臓には古くなった血液の細胞を処理する働きがあるのですが、脾臓が腫大して働きが強まりすぎると(脾機能亢進といいます)、血液の細胞が壊されやすくなり、貧血の一因になることがあるんです。

そして女性なら、子宮筋腫。症状がないと婦人科を受診するきっかけがなくて、腹部のエコーで初めて「筋腫がありますね」と指摘される方が、めずらしくありません。子宮筋腫があると、月経の出血量が多くなることがあります。

つまり——「原因のわからなかった貧血」の理由が、お腹の検査でつながることがあるんです。実際、そういう場面に立ち会ったことも、あります。

貧血が続くのに理由がはっきりしない。そんなときは、血液検査だけでなく、お腹の検査(エコーなど)や婦人科も、選択肢に入れてみてください。体は全部つながっている——毎日プローブを当てていて、つくづくそう思います。

私に出ていた、鉄不足のサイン

自分の体を振り返ると、サインは、ちゃんと出ていました。

  • 疲れやすい … これは、いつものことすぎて、気づきにくい
  • 立ちくらみ … 立ち上がった瞬間の、あのクラッとする感じ
  • 氷食症 … 冒頭の、氷ガリガリ

不思議なもので、症状が出ているときは、なんとなく、検査の数値も悪かった気がします。体は、ちゃんと教えてくれていたんですね。数字を扱う仕事をしていながら、自分の体のサインは見落としがち。反省でもあります。

やってきたこと(ゆるく、ありのまま)

貧血がひどいときは、病院で鉄剤を処方してもらいました。鉄剤を飲むと、便が黒くなるんです(これは心配いりません、鉄の色です)。ただ、もともと便秘気味の私は、鉄剤でさらに便秘になって、便秘薬もセットで処方してもらったこともありました。

食べ物では、症状が出ると、あわててレバー・赤身のお肉・アサリ・シジミに飛びつきます。「女性ホルモンにはイソフラボン」と聞けば、大豆も食べる。……ただ、本当のところ、あまり続きません。それでも、思い出したようにやっています。

そして、ここで私の失敗談をひとつ。せっかく鉄を意識した食事をしながら、食事と一緒に、お茶やコーヒーを飲んでいました。実はお茶やコーヒーに含まれるタンニンには、植物性の鉄(非ヘム鉄)の吸収を妨げる働きがあるんです。鉄を摂っているつもりで、片方の手で吸収のじゃまをしていた——検査技師なのに、お恥ずかしい話です。

今は、鉄を意識したい時期には、お茶とコーヒーは食事と時間をずらすようにしています。とはいえ、貧血のない健康な方が神経質になる必要はありません。「鉄不足が気になる人は、食事のときだけ分ける」——それくらいの、ゆるい心がけで十分です。

ひとつ、私の方針として——サプリメントは、基本的に飲みません。中には肝臓に負担をかけるものもありますし、「病院で処方されるもの以外は、基本いらない」と考えているからです。これは人それぞれですが、私はこのスタンスで、ゆるくやっています。

閉経して、いつの間にか正常に

そして、いちばん実感していること。

月経という、毎月の出血がなくなったら——いつの間にか、貧血をしなくなりました。

あれだけ悩まされた数字が、閉経を境に、するりと正常におさまった。女性の貧血が、いかに「出血」と結びついていたか。自分の体で、はっきりと分かった出来事でした。

もちろん、閉経後は閉経後で、別の変化(血圧コレステロールなど)が出てきます。体は、ライフステージごとに、ちゃんと表情を変えていくんですね。

まとめ:その疲れを、「年のせい」で片づけないで

疲れやすい、立ちくらみ、氷が無性に食べたくなる——。50代になると、つい「年のせい」で流してしまいがちです。でも、その奥に、鉄不足が隠れていることがあります。

  • 女性は、月経・妊娠で鉄を失いやすい。貧血は、ごく身近なもの
  • 健診のヘモグロビンが正常でも、フェリチン(貯金)が減った「隠れ貧血」もある
  • 疲れやサインが続くなら、「フェリチンも測ってもらえますか」と、相談してみて
🚦 受診のめやす
● 疲れやすさ・立ちくらみ・氷食症などが続く → 一度、貧血の検査(血液検査)を
黒い便(鉄剤以外で)・急に強くなる動悸や息切れ → 早めに受診を(消化管からの出血などのこともあります)
月経の量が多い・レバーのようなかたまりが出る → 婦人科へ。子宮筋腫などが隠れていることがあります

同じように、なんとなく疲れている50代のあなたへ。一度、ご自分の鉄のこと、気にかけてみてくださいね。

そして——体の疲れと、心の疲れは、案外、地続きです。数字には出ないけれど「なんだか、すり減っている」と感じる日のことも、おひとりさまのひとりごととして書いています。もし今、そんな気分の夜なら、そっとのぞきに来てください。

※この記事は、検査技師としての一般的な知識と、自分の体験をまとめたものです。診断・治療は、必ず医療機関でご相談ください。

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