2026年8月
健康・検査のこと久しぶりに帰省したら、親のどこを見るか|冷蔵庫・後ろ姿・同じ話
年に何回か、実家に帰ります。
短い滞在です。顔を見て、ごはんを食べて、少し話して、帰ってくる。それだけでも十分だとは思うのですが、車を出したあとに、こう思うことがあります。
見るべきところを、見てきただろうか。
見るのは、冷蔵庫・後ろ姿・同じ話の3か所でいいと思っています。家じゅうを点検する必要はありません。この3つは、短い滞在でも自然に目に入りますし、変化が出やすいところです。
その前に、ひとつ約束していました
以前、母のおすそ分けで食あたりを起こした話を書きました。検査技師なのに、という情けない体験記です。
あの記事の最後に、私はこう書きました。「あと、母の冷蔵庫もときどきのぞきに行かないと……」と。
今回、のぞいてきました。
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1か所目:冷蔵庫
開けてみると、消費期限の切れたものが入っていました。
問題は、そこではありません。前回も同じことをして、そのときに捨てているのです。 それなのに、また1年以上前のものが出てきました。
一度きりなら、片づけが行き届いていないだけの話です。でも、繰り返しているとなると、少し意味が変わります。「片づけていない」のではなく、「期限が切れていることに気づけない」「もったいなくて捨てられない」のほうかもしれません。
ほかに、絶対に使わないであろう、小さくなった使いかけの野菜。同じような調味料が、いくつも。
その場で、捨てました。母には申し訳ないのですが、ここは娘の仕事だと思っています。
冷蔵庫は、暮らしがそのまま出るところです。買い物ができているか、料理ができているか、判断ができているか。3つまとめて分かってしまうので、いちばん効率がいい場所だと思っています。
2か所目:後ろ姿
正面から見ていると、案外わかりません。
母は、電話では「あちこちしんどくてねぇ」と言います。でも会えば、しんどいと言いながら、ちゃんと元気にやっています。顔を見ているぶんには、去年と同じです。
変化が出るのは、後ろ姿のほうでした。
歩き方に、やはり年齢を感じます。そして、並んで歩いていて気づきました。母のほうが背が高かったはずなのに、いまは私と同じくらいの背丈になっています。
身長が縮むのは、加齢によるものもあります。ただし、縮み方によっては、別のことが起きている場合があります。
目安として、20歳ごろと比べて2cm未満の低下は、加齢による変化と考えられています。2cm以上で注意、4cm以上だと背骨(椎体)の骨折が隠れている可能性が指摘されています。骨粗しょう症(osteoporosis)で骨がもろくなると、いつのまにか背骨がつぶれてしまうことがあり、圧迫骨折は、痛みを感じないまま進むことがあります。「転んでいないから大丈夫」とは限りません。気になるときは、整形外科で骨密度の検査を受けられます。
親の若いころの身長を、私たちは案外おぼえていません。母子健康手帳や、昔の健診の記録に残っていることがあります。 比べる数字がひとつあるだけで、判断がずいぶん楽になります。
3か所目:同じ話
同じ話を、何回も聞きました。昔の話は、聞き飽きるほどです。
これだけなら、よくあることだと思います。年齢を重ねれば、話は繰り返されるものです。
気になったのは、そこではありません。事実が、すり替わっていることがありました。
誰が言ったか、いつのことだったか、どちらが先だったか。そういうところが、少しずつ入れ替わっています。
ここで、白状します。私は、つい指摘してしまうのです。 「それ、違うよ」と。
聞き流せばいいと、分かっています。分かっているのに、口が出ます。これは、私のよくないところです。
言われた母は、たぶん、いい気持ちはしません。そして次からは、話さなくなるかもしれません。それがいちばん困ることなのに、私はやってしまいます。
指摘するかわりに、できることがあります。気になった内容を、日付とセットでメモしておくことです。「8月◯日、△△の話を3回」というだけのメモで十分です。受診のときに医師へ渡せますし、何より、自分の思い込みかどうかを確かめられます。
もの忘れと、その一歩手前の状態については、別に書きました。
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見つかったのは、悪いことばかりではありません
ここまで、気になったことばかり書きました。でも今回、うまくいっていることが2つありました。どちらも、道具でなんとかなった話です。
薬は、飲めていました
以前、母は「あれ、飲んだっけ?」となることがありました。薬の管理が、大変になってきていたのです。
そこで、朝・昼・夕と、1回ぶんずつ仕切りのある箱型のケースを買いました。病院で使われているのを見て、これはいいなと思ったものです。
いま、母はそこにきちんと入れて、飲み忘れずに飲んでいます。
1週間ぶんを仕分けるのは、母の仕事です。 そこは代わりません。自分でやるから、続いているのだと思います。
予定は、大きなカレンダーに
もうひとつが、大きなカレンダーの予定表です。
書いてあるので、忘れません。目が悪くなっても、大きければ見えます。
「覚えておいてもらう」のをやめて、「見れば分かる」ようにする。 これだけで、ずいぶん減ることがあります。
見張るより、道具をひとつ置くほうが早い。今回いちばん役に立った気づきは、たぶんこれです。
そして、いちばん現実的な問題は「足」でした
ここからは、チェックというより、私の情けない話です。
母は、ふだんは自分で運転します。軽トラで畑に行きます。7月に書いたときのままです。
ただ、検査で入院するときだけは、本人の運転が禁止されます。 検査の内容によっては、そういうことがあります。それが、たびたびあります。
では、誰が病院へ連れて行くのか。
叔母です。 母の姉で、90歳が目前の人です。
私は、車で2時間のところに住んでいます。仕事もあります。行けません。だから、叔母に甘えています。
ここが、いちばん情けないところです。私は、その叔母に「免許を返納してほしい」と言っていた側の人間です。
返納を勧めておきながら、その人の運転に頼っている。叔母が免許を手放したら、母を病院へ運ぶ人がいなくなります。困るのは、私です。
叔母は今年、免許を更新しました。
「返納してください」と言うのは、簡単です。でも、返納したあと誰が運ぶのかを、私は用意できていません。用意しないまま、言葉だけを言っていました。
帰省したときに見ておくべきことがあるとすれば、冷蔵庫よりも、こちらかもしれません。親が病院へ行く手段は、誰の、何に頼っているのか。 そして、それが使えなくなったとき、代わりがあるのか。
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それでも、申し訳ないと思っていること
こうして偉そうに冷蔵庫を片づけて帰ってくるわけですが、費用は、全部、母が出してくれます。
外食も、持たせてくれるお土産も。親孝行のつもりで帰って、結局もてなされて帰ってきます。
今回は、いいお店のデザートまで買ってくれました。
▲ 母が買ってきてくれたもの。冷蔵庫を勝手に片づけた娘が、これをいただいて帰る。
80代で、ひとりで暮らして、なお娘に出してくれる。ありがたいと思いながら、同じだけ、申し訳ないと思っています。
この夏は、お墓のことでも、庭の松のことでも、母がお金を出す場面がありました。そのことは、別に書きました。
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見るのは、3か所でいい
冷蔵庫。後ろ姿。同じ話。
全部を点検しようとすると、こちらが疲れますし、親も身構えます。この3つなら、ふつうに過ごしているあいだに目に入ります。
そして、気になることが見つかっても、その場で問い詰めないほうがいいと思います。私のように、つい言ってしまう人間が言うのですから、間違いありません。
次に帰るのは、いつになるでしょうか。そのときは、もう少し聞き流せるようになっていたいと思います。
※この記事は、検査技師である筆者が、自分の家族を見て書いたものです。診断・治療については、医療機関でご相談ください。

おひとりさま検査技師
臨床検査技師として病院に30年。生理検査全般を担当、とくに超音波検査(おもに心エコー)。地方在住・50代・おひとりさま。 検査室から見えることと、暮らしのことを書いています。詳しいプロフィール


