2026年9月
健康・検査のこと健診で尿潜血と言われたら|50代女性に多い理由と、このあとされる検査
健診の結果票に、「尿潜血 ±」。
小さな欄の、小さな記号です。それでも、見つけた瞬間に手が止まります。血、という字が入っていますから。
前に尿検査で、私たちが見ていることを書きました。今日はその続きで、潜血の話です。50代以降の女性には、めずらしくない結果でもあります。なぜ出やすいのか、そして再検査になったら、このあと何をされるのか。そこまで書いてみます。
先に、結論をお伝えします
・分かれ目は、1回きりか、続くかです
・再検査になると、まず腎臓と膀胱のエコー。それでも続くようなら尿細胞診
ただし「めずらしくない」は「気にしなくていい」ではありません。理由と順番を、このあと書いていきます。
結果票そのものの読み方は、健診結果の見方にまとめてあります。
更年期のあとは、尿潜血が出やすくなります
血尿診断ガイドラインには、顕微鏡的血尿は加齢とともに増え、男性より女性に多いと書かれています。日本腎臓学会や日本泌尿器科学会など、いくつかの学会がまとめたものです。私たち臨床検査技師の団体も、作成に加わっています。
どのくらい多いのか、割合の数字はここには書きません。数字だけがひとり歩きして、「そんなものか」で終わってしまうのがこわいからです。
検査室にいての実感として書くなら、こうなります。50代以降の女性の結果票で、潜血の欄に何か書かれているのを見ることは、そう珍しくありません。「また出ていますね」と言いながら見ています。
理由として説明されているのは、エストロゲンという女性ホルモンが減ることです。閉経の前後で減っていって、尿の通り道の粘膜が薄く、乾きやすくなります。薄くなれば、ちょっとしたことで出血もしやすくなる。ここは、ガイドラインに書かれている頻度の話とは別で、そう考えられている、という説明です。
私も、±が出たことがあります
えらそうに書いていますが、私自身の結果にも出ました。
結果票の尿の欄を、3回分そのまま載せます。いちばん左が基準値で、そのとなりが1年前の健診、右へ行くほど新しい結果です。
小さくて見えにくいので、動いたところだけ書き出します。
| いつの検査か | 尿潜血 | pH | 色調 |
|---|---|---|---|
| 1年前の健診 | ±(0.03) | 5.5 | 無色 |
| そのあとの再検査 | 陰性(−) | 7.0 | 黄色 |
| 今年の検査 | 陰性(−) | 6.5 | 黄色 |
蛋白も糖も、3回とも陰性でした。動いたのは、潜血とpHと色調だけです。判定の欄は、1年前がBで、そのあとはAに戻っています。A・B・C…と続く記号で、Aがいちばんよい、という意味です(この付け方は、施設によって差があります)。
±のとなりに、(0.03)と数字がついていました。この±にも、数字がつくことがあります。試験紙の反応の強さを、目盛りのように数字にしたものです。陰性と陽性のあいだの、いちばん手前のところ、という意味になります。
受け取ったときに、私が思ったことをそのまま書きます。
±は意外に多く見られるので、続かなければいいかな、と思っていました。±なので。これが1+だと、おっ?と思います。
1+というのは、±の次に強い反応です。同じ潜血でも、±と1+とでは、受け取るこちらの姿勢が変わります。
ただ、これは自分の結果を見たときの感覚であって、判断の基準ではありません。たとえ±でも、続くなら調べます。1回の強さより、次にどうなるかのほうを見ています。
結果として、私の場合は、再検査で陰性になりました。今年の検査でも陰性でした。1回きりで終わった側だった、ということです。逆に言えば、あのとき再検査に行かなければ、それも分からないままでした。
見た目の色と、試験紙が見ているものは違います
ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。
私の結果をもう一度見てください。潜血が±だったときの色調は、無色です。そして、潜血が陰性だった2回は、どちらも黄色でした。
いちばん薄い尿のときにだけ、潜血が出ていた、ということになります。
「色が薄いのに、血が出ているの?」と思われるかもしれません。そう思われるのが自然だと思います。でも、尿の色が薄くても、潜血が陽性になることはめずらしくありません。
理由は、試験紙が見ているものにあります。試験紙は、目で見た赤さを見ているのではありません。赤血球の中にある成分と、化学反応を起こして色が変わるしくみです。ですから、赤血球が壊れて外に出てしまった成分(遊離ヘモグロビン)にも反応します。
そして、尿が薄いときには、赤血球そのものが壊れやすくなります。
水をよく飲んだあとの尿は、薄い尿です(比重が低い、浸透圧が低い、という言い方をします)。薄い液の中では、まわりの水が赤血球の中へ入り込んでいきます。赤血球はふくらんで、やがて破れます。これを溶血(ようけつ/赤血球が壊れること)といいます。
すると、こういうことが起こります。顕微鏡でのぞくと赤血球はあまり見えないのに、試験紙の潜血は陽性。壊れて中身だけが出てしまったあとなので、数えるべき形が残っていないのです。同じ検体を、二つの方法で見ているから起こるずれです。
私の結果は、この形にあてはまります。薄い尿だったので、壊れた赤血球の中身に試験紙が反応した。そう考えると、色が無色なのに潜血だけが±だったことの説明がつきます。
ただし、これは私の3回分をならべて見ただけの話です。溶血は「±が出る理由のひとつ」であって、「病気ではない証明」ではありません。薄い尿だったから安心、とは読めないということです。だから私も、自分で片づけずに、再検査を受けました。
病気以外で、潜血や蛋白が出ることもあります
尿の検査は、体の中のことだけを映しているわけではありません。採ったときの状況も、いっしょに映ります。
- 生理中。潜血が出ます。窓口で言いにくいことだと思いますが、伝えていただけると、その結果を別に置いておけます
- 運動のあと。しっかり体を動かしたあとは、一時的に潜血や蛋白が出ることがあります
- 時間がたった尿。採ってから置いておくと、そのあいだに細菌が増えて、結果が動きます
- 中間尿になっていない。出はじめを捨てずに採ると、尿の出口のあたりのものが混じります
最後のひとつは、私自身にも覚えがあります。
私の結果票には、扁平上皮という細胞が5〜9個/HPFと書かれていたことがあります。基準は1個未満/HPFです。HPFは、顕微鏡を強い倍率にしたときの1視野あたり、という意味です。
扁平上皮は、尿の出口のあたりからはがれてくる細胞です。扁平上皮だけが多く、白血球や細菌、血尿などが見られない場合は、病気というより採尿時の混入である可能性が高く、再検査で確認するのが一般的です。
窓口で「出はじめは捨ててくださいね」とお願いしている人間が、自分の番になるとできていませんでした。そのときの結果票は、尿検査で、私たちが見ていることに載せています。
再検査になったら、こういう順番で調べていきます
「要再検査」と書かれた紙が届いたとき、次に何をされるのかが分かっていると、少し気持ちが違うと思います。よくある順番で書きます。
1つめは、尿沈渣です。尿を遠心分離機にかけて、沈んだものを顕微鏡で見ます。赤血球が本当にいるのか、いるなら1視野にいくつ見えるのかを数えます。試験紙の反応と、顕微鏡で見えるものを、ここで突き合わせます。
そして、数えるだけではありません。赤血球の形も見ています。ここは、顕微鏡をのぞいている私たちが受け持つところです。
大きさがそろっていて、どれも同じような輪郭をしているなら、尿の通り道のどこかから出てきた血だろう、と考えます。反対に、大きさがばらばらで、輪郭がくずれていたり、小さな出っぱりがついていたりするもの(変形赤血球)が目立つときは、腎臓の中のろ過装置を通ってきた血の可能性を考えます。せまいところを通り抜けるあいだに形がくずれる、と考えられているからです。
同じように赤血球の数が報告されていても、形の所見が添えてあれば、腎臓のほうを調べるのか、尿の通り道のほうを調べるのかの見当がつくことがあります。結果票の潜血の欄だけでは、見えない部分です。
2つめは、腎臓と膀胱のエコーです。尿の通り道に、石や腫れているところがないかを見ます。
エコーを受けるときは、2時間ほど前から尿をためていってください。膀胱がふくらんでいないと、壁の様子が見えません。空っぽの膀胱は、たたんだ布のようにしぼんでいて、そこに何かがあっても分かりにくいのです。検査の前にトイレを済ませたくなる気持ちは分かりますが、ここだけは我慢していただけると助かります。
もうひとつ、受ける前に確認しておくとよいことがあります。エコーで見る範囲は、施設によって差があります。上腹部だけのところもあれば、下腹部まで見るところもあります。膀胱は下腹部です。ですから、潜血で受けるときは「膀胱まで見てもらえますか」と聞いておくと確実です。聞いてはいけないことではありません。
撮っている側の話を書くと、膀胱はいちばん最後に見ることが多い場所です。ためて来ていただいたのに、途中で「すみません、もう限界です」と言われることもあります。そういうときは、先に膀胱から見ます。順番は変えられますから、我慢比べをしていただく必要はありません。エコーそのものの話は、エコーの話に書きました。
3つめは、尿細胞診です。潜血が続くときに行います。尿の中に流れてきた細胞を染めて、顕微鏡で見る検査です。痛みはありません。尿を出すだけです。
「異常なし」と言われても、安心しきらないでください
ここは、書くかどうか迷った部分です。
血尿診断ガイドライン2023には、尿細胞診も腹部超音波も、尿路上皮癌や腎癌を見つける感度は十分ではない、とはっきり書かれています。作った人たちが、自分たちの検査の限界を書いているということです。
これを読んで「検査はあてにならない」と思われたら、私の書き方が悪かったということになります。そうではありません。1回で見つけられないことがあるから、続けて見るのです。1回の検査で終わりにせず、続くかどうかを追いかけることに意味があるのは、そのためです。
もうひとつ、数字の幅の話もしておきます。尿沈渣の赤血球の数には、報告の仕方に幅があります。顕微鏡でいくつかの視野を見て、その平均で出しているからです。同じ尿でも、見る視野が変われば数は動きます。だから基準値のほうにも幅があります。
ですから、1回の数字に振り回されなくて大丈夫です。ただし、明らかなものは、誰が見ても違いません。幅があるというのは、そこまで含めてあいまいだ、という意味ではありません。
こういうときは、早めに受診してください
次のような場合は、次の健診を待たずに行っていただきたいです。
- コーラのような色、赤い尿が出たとき。目に見える血尿は、±とは別のものです
- 蛋白も同時に高いとき。潜血と蛋白がそろって出ているときは、腎臓のほうを調べます
- 繰り返し指摘されるとき。去年も今年も、というのがいちばん大事なサインです
反対に、1回きりで、次が陰性で、ほかの項目も動いていないのなら、あわてる必要はありません。私がそうでした。
最後に、手順だけ並べ直しておきます
- 健診で「尿潜血 ±」と書かれたら、まず再検査に行く
- 再検査では、尿沈渣で赤血球を数え、腎臓と膀胱のエコーで通り道を見る
- エコーは2時間ほど前から尿をためていく。見る範囲は施設によって差があるので、下腹部まで見てもらえるか聞いておく
- それでも潜血が続くなら、尿細胞診に進む
- 見ているのは、1回の強さではなく、続くかどうか
私の±は、1回きりで終わりました。でも、終わったと分かったのは、もう一度受けたからです。あの紙をしまい込んでいたら、いまも「あれは何だったんだろう」と思っていたはずです。
結果票は、しまう前に、もう一度だけ開いてみてください。
※この記事は一般的なお話です。診断・治療は医療機関でご相談ください。

おひとりさま検査技師
臨床検査技師として病院に30年。生理検査全般を担当、とくに超音波検査(おもに心エコー)。地方在住・50代・おひとりさま。 検査室から見えることと、暮らしのことを書いています。詳しいプロフィール


