2026年5月
(更新:2026年9月)
健康・検査のこと脂肪肝は、超音波でこう見えています|検査技師が画像でお見せします
肝臓は、脂肪の置き場所ではありません。
健診で「脂肪肝ですね」と言われて、戸惑っている方に向けて書きます。痛くもかゆくもないし、お酒もそんなに飲まないのに、と思っていらっしゃるかもしれません。
この記事では、その脂肪肝が超音波でどう見えているのかを、実際の画像でお見せします。私が毎日、画面の前で何を見ているか、という話です。
脂肪は、置き場所からあふれると別の場所に置かれます
体の脂肪には、置き場所があります。
ひとつは皮下脂肪。おなかや二の腕の、つまめるところの脂肪です。もうひとつは内臓脂肪。腸のまわりについて、健診の腹囲で気にされるほうです。この2つは、いわば決められた収納場所です。
ところが、そこに入りきらない分が出てくると、体は別の場所に置き始めます。それが異所性脂肪です。脂肪細胞ではないところ、本来なら脂肪を持たないはずの臓器にたまる脂肪のことをいいます。
肝臓の脂肪肝は、その代表です。押し入れがあふれて、廊下に段ボールを積み始めた状態、と考えてもらうと近いかもしれません。
だから、痩せている方にも起こります。外から見て分かるのは皮下脂肪だけで、廊下に何が積んであるかは、見た目では分からないのです。
では、どのくらいたまると「脂肪肝」と呼ばれるのか。ここは少しややこしくて、顕微鏡で見る基準と、画像で見つかる基準が違います。組織のうえでは肝細胞の5%以上に脂肪がたまれば脂肪肝ですが、従来はもっと多い30%以上をもって脂肪肝と呼んできました。ふつうの超音波で「白いな」と分かるのも、だいたいそのくらいからです。軽いものは、画面では拾いきれません。
お酒を飲まなくても起こります(病名は2023年に変わりました)
脂肪肝はお酒の病気、という印象が長くありました。でも実際には、飲まない方にもよく起こります。
2023年、国際的な学会が、この分野の呼び方をまとめ直しました。SLD(脂肪性肝疾患)という大きな傘をつくって、その下に原因ごとの分類を置く、という考え方です。日本語の病名は、2024年8月に日本消化器病学会と日本肝臓学会から発表されました。
このうち、健診で脂肪肝と言われた方に関わってくるのは、おもに2つです。
MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)。お酒ではなく、代謝のほうに理由がある脂肪肝です。肥満・血糖・血圧・中性脂肪といった条件のどれかに当てはまり、お酒はほとんど飲まない。かつて「非アルコール性脂肪肝」と呼ばれていたものが、だいたいここに入ります。
MetALD(代謝機能障害アルコール関連肝疾患)。こちらが、今回いちばんお伝えしたい分類です。そんなに飲まないけれど、まったく飲まないわけでもない。そういう方のための区分です。
以前は、お酒を飲む人か飲まない人か、という二択で分けていました。でも実際の暮らしは、そんなにきれいに分かれません。週末だけ飲む。人と会うときだけ飲む。晩酌はするけれど1杯で終わる。そういう方が、どちらにも収まらないまま置かれていました。
MetALDは、そこに名前をつけた分類です。目安として、1日あたりの純アルコールで女性は20〜50g、男性は30〜60gあたりが、この区分に当たるとされています。それより多ければ、ALD(アルコール関連肝疾患)のほうに入ります。
ただし、ここは正直に書いておきます。この飲酒量の目安は、日本でこれまで使われてきた基準とは少しずれています。日本の学会は、どう折り合いをつけるかを今も検討しているところです。ですから「自分は何グラムだからこの分類だ」と厳密に当てはめるより、飲んでいる量をそのまま主治医に伝えるほうが、ずっと役に立ちます。
このほかに、MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)、ALD(アルコール関連肝疾患)、成因不明脂肪性肝疾患、特定成因脂肪性肝疾患があります。
50代の女性で脂肪肝が増えてくる理由は、閉経後の体の変化と地続きです。その話は50代女性の健診、数値は「つながって」読むに書きました。
超音波では、こう見えています
ここからは、画面をお見せします。
▲ 脂肪がたまっていない肝臓。腎臓との明るさの差が、ほとんどありません。
超音波で脂肪肝を見るとき、私たちは明るさそのものではなく、隣の臓器との差を見ています。画面の明るさは機械の設定でいくらでも変わってしまうので、絶対値ではあてにならないからです。
使うのは、肝腎コントラスト(肝臓と腎臓の明るさの差)です。健康な肝臓は、隣の腎臓と同じくらいの明るさか、ほんの少し明るいくらい。あわせて、脾臓と腎臓の明るさの差も参考にします。肝臓だけを見て「白い」と言うのではなく、ほかの臓器どうしの関係が保たれているかどうかまで見にいく、という感覚です。
▲ 脂肪肝。肝臓のほうが白く浮き上がって、腎臓との差が開いています。
脂肪がたまると、肝臓のほうがはっきり白く浮き上がります。腎臓との境目が、段差のように見えてきます。
▲ 深部減衰。脂肪が超音波をさえぎるので、奥ほど見えにくくなります。
もうひとつの手がかりが、深いところの見えにくさです。脂肪は超音波を通しにくいので、脂肪がたまった肝臓では、奥へ行くほど画面が暗くぼやけていきます。これを深部減衰といいます。縦にすじが下りたように見えることから、すだれ状と表現することもあります。手前は白いのに、奥は霞んでいる。この見え方も、脂肪の多さを教えてくれます。
私が腹部エコーを担当する日は、多い日で10件ほど。そのうち3〜4人には、軽いものを含めて脂肪肝の所見をつけます。年齢層が高めの方が多い環境なので、健診受診者全体の割合とは違いますが、それでも珍しい所見ではありません。一般には、日本人の成人のおよそ3人に1人が脂肪肝という報告もあります。
エコーのいいところは、痛みがなく、被ばくもなく、その場で動いているものをそのまま見られることです。息を吸ってもらえば見え方が変わり、その場で確かめ直せます。
ただし、この検査にも見えないところがあります。撮る人によって差が出ますし、軽い脂肪肝は画面では拾いきれません。エコーで分かることと、分からないことは、去年は軽度、今年は中等度に書きました。
いま書いた肝腎コントラストは、あくまで人の目による判定です。そこで近年は、超音波がどれだけ弱まるかを数値で測る方法が使われるようになりました。2022年4月から保険でも認められています。目で見て「だいたい白い」と言っていたものが、数字で追えるようになった、ということです。経過を比べるときに、これがいちばん効きます。
脂肪がついていたのは、肝臓だけではありませんでした
はじめのほうで、脂肪は置き場所からあふれると別の場所に置かれる、と書きました。置かれるのは、肝臓だけではありません。
▲ 脂肪のついていない膵臓。まわりとの境目が追えます。
▲ 脂肪がついた膵臓。白くなって、まわりとの境目が分かりにくくなります。
2枚目は、さきほどの脂肪肝の方と同じ方の膵臓です。膵臓にも脂肪がつくと、実質が白くなり、まわりの脂肪組織との境目がぼやけてきます。肝臓のときと同じで、隣との差が消えていくのです。
これを膵脂肪沈着(fatty pancreas)といいます。肥満や加齢とともに増え、脂肪肝と一緒に見つかることがよくあります。
ただし、ここははっきり書いておきます。膵臓の脂肪については、肝臓ほど分かっていません。どこからを異常とするかの決まった基準も、これがあるからこう治療する、という筋道も、まだ定まっていません。糖尿病との関わりが指摘されてはいますが、断定できる段階ではないのです。
それでも、同じ方の肝臓と膵臓の両方に脂肪が乗っている画像を並べて見ると、思うことがあります。あふれた脂肪は、一か所だけに行くわけではない。押し入れから出た荷物は、廊下にも、階段にも置かれていきます。
血液検査が正常でも、脂肪肝はあります
肝機能の数値(ALT・AST・γ-GTPなど)に表れることもありますが、数値が正常でも脂肪肝はあります。珍しいことではありません。
「血液検査は問題なかったから大丈夫」と思っていらっしゃる方の肝臓が、画面ではしっかり白い。これは現場でよく出会う場面です。
だから、おなかのエコーで先に気づけることが多いのです。数値に出るのを待たなくていい、というのが、この検査のいちばんの値打ちだと思っています。
進行すると、かえって目立たなくなることがあります
ここからは、この記事でいちばん書きたかったところです。
脂肪肝が進んで、肝臓が硬くなっていく段階に入ると、不思議なことが起こります。画面の白さが、かえって落ち着いてくるのです。
はじめて知ったときは、意味が分かりませんでした。よくなったのではないか、と。
でも、そうではありません。脂肪をためていた肝細胞そのものが減って、線維——かたい組織に置き換わっていく。ためる力が落ちたから、たまらなくなったのです。画面は「白さが引いた」と見せてくるけれど、中で起きていることは、その逆です。
血液検査でも、同じことが起こります。ALTは、肝細胞が壊れたときに血液へ漏れ出てくる数値です。ところが壊れる細胞そのものが減っていけば、漏れ出る量も減ります。だから進行すると、ALTはむしろ下がってくることがあります。
数字が下がって、画面も落ち着いて、本人は何も感じない。
悪くなるほど、見た目の異常が薄れていく。私がこの仕事でいちばん怖いと思っているのは、こういう状態です。派手に異常が出るものより、静かに引いていくもののほうが、見落とされます。
だから、別の物差しが必要になります。脂肪がどれだけあるかではなく、肝臓がどれだけ硬くなっているかを見にいく物差しです。血液検査の数値と年齢から計算するFIB-4インデックスというものがあって、健診の結果票からでも出せます。その話はFIB-4 indexの計算方法に書きました。計算できるフォームも置いてあります。
やらなくていいこと
最後に、よく聞くけれど的を外している対策を、いくつか。
脂っこいものを控えるだけでは足りません。肝臓に脂肪をためる大きな原因は、脂そのものより糖質です。とくに果糖は肝臓で処理されるので、甘い飲みものは効いてきます。揚げ物を我慢しながら、毎日ジュースを飲んでいる。これはあまり報われません。
しじみやウコンで治るものではありません。肝臓によいと言われるものはたくさんありますが、たまった脂肪を減らす働きは期待できません。むしろ鉄分を含むものは、肝臓に負担をかけることがあります。
急に体重を落とすのも、すすめられません。短期間で大きく減らすと、体じゅうの脂肪が一気に肝臓へ運ばれて、かえって脂肪肝が悪くなることがあります。落とすなら、ゆっくり。
では何をすればいいのか。食べすぎを控えることと、体を動かすこと。この2つです。地味ですが、いまのところ、これがいちばん確実に効きます。
まとめ
- 脂肪肝は、置き場所からあふれた脂肪が肝臓に置かれた状態。痩せていても起こります
- 病名は2023年に整理され、そんなに飲まないけれど飲まないわけでもない方のための分類(MetALD)ができました
- 超音波では、隣の腎臓や脾臓との明るさの差で見ています
- 血液検査が正常でも脂肪肝はあります。エコーのほうが先に気づけます
- 進行すると、画面もALTもかえって落ち着いて見えることがあります。だから硬さを見る物差しが要ります
こんなときは、医師に相談してください。
- 健診で「脂肪肝」「要経過観察」「要医療」と案内された
- 肝機能の数値が高い、または中性脂肪・血糖値も一緒に高め
- おなかのエコーを一度も受けたことがない
- お酒を飲む量が、自分でも多いかもしれないと感じている
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お酒を飲まなくても、と書きました。体のほうは、こちらの都合とは関係なく変わっていきます。
※本記事は脂肪肝の一般的な解説であり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。気になる症状や数値がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

おひとりさま検査技師
臨床検査技師として病院に30年。生理検査全般を担当、とくに超音波検査(おもに心エコー)。地方在住・50代・おひとりさま。 検査室から見えることと、暮らしのことを書いています。詳しいプロフィール


