2026年8月
健康・検査のこと口唇ヘルペスと帯状疱疹は、どう違う?|コロナのあと、鼻が派手なことになりました
熱が下がって、ようやく起き上がれるようになったころに、鏡を見て、あ、と思うことがあります。
唇の端や、鼻の下に、見覚えのあるものができている。治りかけなのに、気持ちだけがまた沈みます。
私の場合は、いつも鼻です。ときどき口の横にも出ます。抵抗力が落ちているのかな、くらいに思って、長いあいだ付き合ってきました。
これは2026年の初夏の話です。私は初めて、新型コロナウイルスにかかりました。そして熱が下がったころ、その鼻が、なかなか派手なことになったのです。
・口唇ヘルペスと性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)によるもの
・帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)によるもの。子どものころの水ぼうそうが、体の中で目を覚ましたものです
・名前は似ていますが、別のウイルスです。ですから、口唇ヘルペスをくり返す人が帯状疱疹になりやすい、というわけではありません
うつり方も、薬も、ワクチンの話も、このあと順番に書いていきます。
一年中マスクをしているのに、かかりました
仕事柄、私は一年中マスクをしています。それでも、かかるときはかかるのですね。
始まりは喉の痛みでした。そのあと熱が上がって、38.5度を超えました。久しぶりの高熱です。しんどい、という言葉しか出てきませんでした。
まわりにも、かかった人が何人かいました。それでも、まさか私が、という感じでした。
上がインフルエンザ、下が新型コロナです。インフルエンザは対照の線が1本だけ。コロナのほうには、線が2本、しっかり出ていました。
思い返せば、そのころの私は、とても忙しくしていました。自分でも疲れているな、と感じていた時期です。
熱が下がったころ、鼻が派手なことになりました
熱が下がって、今度は鼻をかみすぎて痛いな、と思いはじめたころでした。
その鼻に、口唇ヘルペスができたのです。
しかも今回は両側で、鼻の裏側にもできていて、痛みがありました。
口唇ヘルペス(herpes labialis)は、俗に「熱の華」とも呼ばれます。熱が出たあとに顔を出すから、その名前がついたのでしょう。まさに、そのとおりのことが起きたわけです。
見た目が、とにかく派手です。かさぶたになってからも長く残ります。私はマスクで隠しますが、隠しているあいだじゅう、人の目が気になっています。
口唇ヘルペス・性器ヘルペス・帯状疱疹|ウイルスの違い
同じ「ヘルペス」という言葉が使われるので、ひとつの病気のように思われがちですが、原因になるウイルスが違います。
| 口唇・性器ヘルペス | 帯状疱疹 | |
|---|---|---|
| ウイルス | 単純ヘルペスウイルス(HSV) | 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV) |
| はじめの感染 | 皮膚や粘膜から | 水ぼうそうになる |
| そのあと | 神経節にひそむ | 神経節にひそむ |
| 出てくるきっかけ | 疲労・発熱・寝不足・月経・紫外線など | 免疫の低下・加齢など |
| くり返し方 | 同じ場所にくり返す | くり返すことは多くない |
| 人へのうつり方 | 病変部や唾液にふれて感染 | 帯状疱疹としてはうつらない |
ひとつ、覚えておくと役に立つことがあります。
単純ヘルペスウイルスには、HSV-1とHSV-2があります。口唇ヘルペスはHSV-1、性器ヘルペスはHSV-2が多いのですが、これはあくまで傾向です。HSV-1が性器に感染することもありますし、HSV-2が口のまわりに感染することもあります。「この場所に出たから、こちらのウイルスだ」と決めつけることはできません。
ウイルスは、体の中に住み続けています
いちど感染したヘルペスウイルスは、体から出ていきません。
神経節(nerve ganglion)という、神経が集まっている場所にひそんで、そこに住み続けます。
住んでいる家が同じなので、出てくる玄関も毎回同じです。だから口唇ヘルペスは、いつも決まった場所にくり返します。私の場合は、それが鼻だった、というだけのことでした。
水痘・帯状疱疹ウイルスも同じです。子どものころに水ぼうそうにかかると、治ったあとも神経節に残ります。そして免疫が下がったときや年齢を重ねたときに、再び動き出して帯状疱疹になります。
ここは、いちばん誤解されているところだと思います。
「これ、うつりますか」と聞かれたら
見た目が派手なので、私自身がいちばん気にしているのは、そこです。
口唇ヘルペス・性器ヘルペスは、病変部や唾液、分泌物にふれることで感染します。症状が出ている時期は、とくに感染力が高いと考えられています。タオルやコップの共用、口をつける行為は避けたほうが無難です。性器ヘルペスでは、症状がないときでもウイルスが出ていて、相手にうつることがあります。
帯状疱疹は、少し事情が違います。帯状疱疹そのものが、他人に帯状疱疹としてうつるわけではありません。ただし水疱の中の液にはウイルスがいますから、それにふれた相手が水ぼうそうにかかったことがない場合、水ぼうそうとして発症する可能性があります。
・水ぼうそうにかかったことがない妊婦さん
・赤ちゃん
・免疫が下がっている方(治療中の方、免疫を抑える薬を使っている方)
こうした方が身近にいるときは、水疱が乾いてかさぶたになるまで、接触を控えるのが安全です。
正しく知っていれば、必要以上にこわがることも、必要以上に油断することもなくなります。私が調べたかったのは、結局そこでした。
抗ウイルス薬を、私はやめてしまいました
ここからは、私の反省です。
昔の私は、出るたびにゾビラックス(アシクロビル)などの抗ウイルス薬を飲んだり、塗ったりしていました。ところが効いている実感がありませんでした。それで、いつのころからか、ほったらかしになったのです。
これがいいのかどうか、自分でもずっと引っかかっていました。今回、きちんと調べてみて、思い当たることがありました。
たぶん、飲むのが遅かったのです。
ヘルペスの薬は、ウイルスが増えるのを抑えるものです。水疱ができて、見た目に「出た」と分かるころには、ウイルスはもう増えきっています。そこから飲んでも、効いた気がしないのは無理のないことでした。
大事なのは、その前です。なんとなく違和感がある、つっぱる、少し熱を持っている。あの前ぶれの段階で飲むと、経過が変わることがあります。
再発をくり返す人には、PITという方法があります
調べていて、いちばん「知らなかった」と思ったのがこれです。
PIT(Patient Initiated Therapy)といって、あらかじめ薬を処方してもらっておき、再発の前ぶれを感じたときに、自分の判断で飲み始める方法があります。
- 1回、または2回の内服で終わる飲み方です
- アメナメビル(アメナリーフ)は、2023年2月に、再発性の単純疱疹に対してこの使い方が承認されました
- ファムシクロビル(ファムビル)にも、同じ使い方があります
ただし、誰でもすぐに薬をもらえる、というものではありません。おおよそ、こういう方が対象になります。
- 過去に医師から単純ヘルペスと診断されたことがある方
- 年に何度もくり返している方
- 再発の前ぶれを、自分で分かる方(違和感や、つっぱる感じ)
つまり、いちどは受診して、診断と処方を受けておく必要があります。出るたびに病院へ行かなくていいのは、そのあとの話です。私のように、写真を撮っただけで済ませてきた人間には、まずそこからでした。
薬局で買える塗り薬(アシクロビルやビダラビンの軟膏)もありますが、これは「以前に医師の診断を受けたことがある人の、再発のとき」に使うものです。初めて出たものには使えません。
・目のまわりや鼻に出て、目の痛み・充血・かすみがあるとき(眼科へ)
・初めて出たとき
・広い範囲に出たとき、両側に出たとき
・熱や強い痛みをともなうとき
・2週間ほどたっても、よくならないとき
目のことは、書いておかなければと思いました。単純ヘルペスウイルスが目に感染すると、角膜ヘルペス(herpetic keratitis)を起こすことがあります。放っておくと角膜が濁ることもある病気です。市販のステロイドの目薬を自己判断で使うと悪くなることがあるので、目の症状があるときは眼科で診てもらってください。
私の今回は両側で、鼻の裏側にもできていました。目からもそう遠くありません。本当は、私こそ一度診てもらうべきだったのです。「ほったらかし」を、人にはおすすめしません。
50歳を過ぎたら、帯状疱疹ワクチン。でも私は対象年齢ではありません
もうひとつ、ずっと考えていることがあります。
「50歳を過ぎたら帯状疱疹ワクチンを」と言われて、母に聞いてみたことがありました。すると私は、小さいころの水ぼうそうがずいぶん重かったのだそうです。
それを聞いてから、早く打ちたい気持ちが強くなりました。ただ、正直に書いておくと、子どものころの水ぼうそうが重かった人は帯状疱疹も重くなる、という根拠は、今回調べたかぎりでは見つかりませんでした。私の中の理屈だったようです。
日本人の成人は90%以上が、すでに水痘・帯状疱疹ウイルスを体の中に持っているとされています。つまり「うつるかどうか」ではなく「いつ目を覚ますか」の話です。帯状疱疹は80歳までにおよそ3人に1人が経験するといわれ、患者さんのおよそ7割が50歳以上です。2014年に子どもの水痘ワクチンが定期接種になってから、大人が水ぼうそうの子どもと接する機会が減りました。ウイルスと再会することで免疫が押し上げられる機会も減った、と考えられています。
定期接種の対象年齢と、自治体の助成
帯状疱疹ワクチンは、2025年4月から定期接種になりました。対象はこうなっています。
- その年度に65歳になる方
- 経過措置として、2025年度から2029年度までの5年間は、その年度に70・75・80・85・90・95・100歳になる方も対象
- 60歳から64歳で、HIVによる免疫の機能の障害がある方
私のような50代は、ここに入っていません。だから全額自己負担になります。ワクチンは2種類あって、生ワクチンは1回、不活化ワクチン(シングリックス)は2回の接種です。自費だと、とくに不活化ワクチンはまとまった額になります。
ここで、調べていていちばん役に立ったことを書いておきます。
東京23区の一部や、奈良市などがそうです。国の定期接種とは別に、市区町村が上乗せで補助を出しているところがあるのです。金額も対象年齢も自治体によってまるで違います。
お住まいの自治体名と「帯状疱疹ワクチン 助成」で検索してみてください。 私も、これは知りませんでした。
そう書いておいて何ですが、私の住むところにはありませんでした。65歳など、決められた年齢の方だけです。
ただ、まったくの無駄でもありませんでした。その年齢になれば全額自己負担ではなく、補助が受けられると分かったからです。ないと分かることにも、意味はありました。
助成を出している自治体のほうが少数のようです。それでも、あるかどうかは調べてみないと分かりません。
打つか、待つか
検査室にいると、帯状疱疹の重い方を見ることがあります。帯状疱疹後神経痛(postherpetic neuralgia)といって、皮膚が治ったあとも痛みが長く残る方がいらっしゃるのを知っているので、余計に迷います。
そして、口唇ヘルペスにこれだけなるのだから、私は帯状疱疹にもなりやすいのではないか。ずっとそう心配していました。
けれど、ここまで書いてきたとおり、この2つは別のウイルスです。口唇ヘルペスをくり返すことと、帯状疱疹のなりやすさは、直接は結びつきません。 心配のひとつは、これで減りました。
ただ、共通していることもあります。どちらも、こちらが弱ったときに出てくるということです。私の鼻は、忙しさに気づいていながら休まなかった私に、しっかり出てきました。
自費で今打つか、対象年齢まで待つか。待てば負担は軽くなると分かった一方で、待っているあいだにも体は年をとっていきます。まだ決められずにいます。
あのころの私は、忙しさを自分でも分かっていました。分かっていて、休まなかっただけです。
働き方を変えたのも、こういうことを何度もくり返したからでした。
鼻の跡は、しばらく残っていました。それでも私は、いつもどおりマスクをして家を出ました。
隠したいものがあってもなくても、結局は同じマスクなのですけれど。
※この記事は一般的な情報と、私自身の経験をもとに書いたものです。症状の判断や治療については、必ず医療機関でご相談ください。ワクチンの助成内容は自治体によって異なり、変更されることがありますので、最新の情報はお住まいの市区町村にご確認ください。

おひとりさま検査技師
臨床検査技師として病院に30年。生理検査全般を担当、とくに超音波検査(おもに心エコー)。地方在住・50代・おひとりさま。 検査室から見えることと、暮らしのことを書いています。詳しいプロフィール


